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「東京物語」笠智衆と原節子

「東京物語」笠智衆と原節子

浄土寺境内

家族に囲まれながら朝を迎えられず亡くなった病気の妻。夫は皆の前で号泣することなく、わずかに口をゆがませます。すっかり朝になって、父がどこへともなく姿を消したことに気づく子供たち。原節子演ずる義理の娘が探しにくると、父はこのあたりから海を見ていて「ああ 綺麗な 夜明けだった」と言います。
亡くなった妻を囲む子供たちから1人離れ、彼が何を思っていたのかを、観ているこちらに考えさせる非常に印象的で味わい深いシーンです。
また「お父さんは?」「どこかしら」と言いながら立ち上がりもしない子供たちと、サッと庭に駆けていく義理の娘の温度差も印象的。これを単純に冷たい子供と気の利く義理の娘と解釈するのは短絡的で、人間関係は濃くなるほどそっけなくなる、という現れのように思えます。何かあったとき、他人ほど「大丈夫ですか」と言い、家族は「ああ、そんなところにいたの」ぐらいなのが現実なのではないでしょうか。恐ろしくリアルで、ちょっと寂しいシーンでもありました。この映画全体に流れているテーマを象徴しているように思いました。