『合衆国壊滅/M10.5<ノーカット完全版>』
『合衆国壊滅/M10.5<ノーカット完全版>』を見た。アメリカ西海岸に大地震が巻き起こる。しかも余震ではなく次々と。M10.5は日本人にもお馴染みマグニチュードだ。特撮部分はさすがアメリカ製でよく出来ている。アメリカ映画には珍しく「ヒーローによる完全解決」でないところに、多少は自然に対する畏敬も感じないでもない。この完全版は165分もあるが、ドラマに緩急があって退屈はしなかった。
それにしてもアメリカは苦難を核爆弾で解決する映画が多い。核を常に正当化しておきたいのかなと思ったりもするが、しかし逆に「地質を変える」とか「彗星を爆破する」とか「宇宙人を退治する」とかいう話には、今のところほかに現実的な手段がないかもしれないとも思う。日本がウルトラマンやガメラに頼らないといけないのはそのためか? ま、それでも非核3原則は人類にとって正義である。彗星が落ちてきたら甘んじて死のう。それより、保有国がもたらす核の恐怖の方が今のところ大きいのだから。
シナリオの進み方はまあ普通のパターンで、よく出来る女性地質学者と、意見をハナから相手にしないマヌケな(というか保守的な)学者達やFIMAの親方。彼女の言うことが段々真実になるにつれ、周りの男たちが「まいった」になって、女性が見たら爽快かもしれないし、私がこのパターンを見ると、しっかりしてくれよ男ども、と言いたくなる。
ただ考えてみると、「出来る女性地質学者」が1人だから良いけれど、鋭い女性学者が2人いて意見が違ったら映画的にどうなるんだろう。どちらかがFIMAのオジサンに受けが良い悪役になって、信じてもらえない方が結局は優秀で、というパターンになるだけか。現実には優秀な学者が複数いるだろうが、大抵のSF映画では優秀な科学者は全米で1人だ。争っている場合ではないので結果オーライだが、1人ではアメリカも毎度薄氷を踏む思いだろう。この作品では女性学者を起用しておいて、その人の言うことを相手にしないFIMAの人の気持ちが今ひとつ分からない。連れてこないと映画が始まらないけれど・・
邦題は別の言葉を考えて欲しかった。今回の場合、原題は「10.5(TEN POINT FIVE)」なのだが、「合衆国壊滅」は大げさすぎる。地震であんな大きな国が壊滅って、日本沈没みたいに全体が沈むのか?などと期待?してしまうと、ワシントンもニューヨークも、要するに西海岸以外なんともないのだ。なかなか壊滅しないので、続きがあるのではと思っていると終わってしまう。控えめでもいけないし、大げさでも期待はずれになるし、ネーミングは難しいものだ。
俳優さん達はイイし、大勢出てくる割によく最後にまとまっている。特にヤンチャ娘のキャラクターは好きだ。ドラマとして楽しめた。
あれだけの地震になると備えあっても殆ど役に立たないので、あまり参考にはならないような。一番必要になるのは避難に使う自動車とその燃料だが、自宅にガソリンを買いおきするなんてことは危ないからゼッタイできないし、日本では自動車そのものも火だねになるから通行禁止になる。やはり日本人は普通に言われている食料や水の備蓄などをオーソドックスにしておくしかなさそうだ。幅が何キロもある地割れが出来たら素直に死にましょう。
最近のアメリカ映画の中で、ドキュメンタリータッチのドラマや刑事物によく出てくるようになった「手持ちカメラ風カット」。いかにも「パンが追いつかない」「ピントやズームが決まっていない」という風を作り出すのだが、これが飽きてくるとウットウシイだけになってくる。素人のビデオのように目まぐるしくズームをするのだが、パニック場面だけでなく、大統領が官邸の中で会議しているような場面でも同じパターンでくるものだから、どう考えても馴染めない。本来リアリズムを増すための技法なのに、「おいおい、さっきの地震現場とワシントンのホワイトハウスの中に同じカメラマンがいるのかい」と感じる。同じパターンでズームやパンを繰り返すとかえって不自然だ。「プロのドキュメンタリーカメラマンは、そこまで下手じゃないだろう」と言いたくなる。かけずり回っている現場だけにしておけば自然だっただろうに、と思う。
こういうカメラテクニックはすぐに日本にも取り入れられているが、とても目立つ目新しいテクニックだけに「あ、真似してる」と思われるので、演出家はあまり多用しないようにと言いたい。以前テレビ東京で放送していた「CSI:科学捜査班」(アメリカの鑑識捜査ドラマ)で使われていたころは「かっこいいな」と思っていたのだが、最近ハナについてきた感じなので、効果的に一部分だけ使ってほしいと思った。
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